辞右大臣職第一表 右大臣の職を辞するの第一表
臣道真言。 臣道真
伏奉今月十四日詔旨、 伏して今月十四日の
以臣任右大臣。 臣を
仰戴天慈、不知所措。
〈中謝〉 〈中謝〉
臣、 臣、
地非貴種、家是儒林。 地は
偏因太上皇往年抜擢之恩、
自至諸公卿今日昇進之次。
無寝無食、
以思以慮。 以て思ひ以て
人心已不縦容、 人心
鬼瞰必加睚眥。
伏願、陛下、 伏して願はくは、陛下、
高廻聖鑑、早罷臣官。 高く
非唯不奪志於匹夫、
亦復得従望於衆庶。
不堪懇款屏営之至、
上表以聞。
臣道真、誠惶誠恐、 臣道真、
頓首頓首、死罪死罪。
謹言。 謹んで
昌泰二年二月廿七日 昌泰二年二月廿七日
正三位守右大臣 正三位
兼行右近衛大将
臣菅原朝臣 臣菅原
右大臣の職を辞退する
臣道真申し上げます。
伏して今月十四日の
帝から慈愛を
〈中謝〉
私は、
名家の出ではなく、学者の家に生まれました。
(しかし)ひとえに
おのずと数多の公卿が現在昇進する(高い)地位に至りました。
(しかし、それゆえ)安眠できず食も
思い悩みひどく憂えております。
(この状況を)もはや人々は許さず、
必ずや鬼神は見て
どうかお願いです、陛下、
(現状を)御高覧頂き、すぐに私の(右大臣の)職を
(それは、)ただ(私のような)小人物の意思を変えさせないだけでなく、
同時に万民の希望に沿うところでございます。
(我が)真心の不安の極みに耐えられず、
表を奉って申し上げる次第です。
臣道真、誠惶誠恐、
頓首頓首、死罪死罪。
謹んで申し上げます。
昌泰二年二月廿七日
正三位守右大臣
兼行右近衛大将
臣菅原朝臣