山陰亭

原文解説口語訳

『菅家後集』482

九月十日

去年今夜侍清涼    去年の今夜 清涼せいりやうはべ
〈御在所殿名。〉   〈御在所の殿の名なり。〉
秋思詩篇独断腸    秋思しうし の詩篇 独り断腸だんちやう
〈勅賜「秋思」賦之。 〈みことのりして「秋思」をたまひてす。
 臣詩多述所憤。〉   しんが詩は多くいきどほる所をぶ。〉
恩賜御衣今在此    恩賜おんし の御衣は今ここ
捧持毎日拝餘香    捧持ほうち して毎日餘香よきやうを拝す
〈宴終晩頭賜御衣。  〈宴終はり晩頭に御衣をたまふ。
 今随身在笥中。    今身に随ひうちに在り。
 故云。〉       ゆゑふ。〉

▼ 末尾へ▲ 先頭へ

口語訳

九月十日

昨年の今夜(十日) 清涼殿せいりょうでんに伺候し
〈「清涼」は帝のいらっしゃる建物の名前である。〉
「秋思」の詩篇に ひとり痛切な哀しみを詠んだのだった
みことのりによって「秋思」の題を頂き詩を詠んだ。
 私の詩はねんごろに秋に思い乱れるさまを述べていた。〉
その時帝から賜わった御衣は今ここにあり
捧げ持っては日々残り香を聞くのである
〈宴が終わって宵に御衣を賜わった。
 今自分の身に随って都を去り、(竹製の箱)の中にある。
 だからこう述べるのである。〉

▼ 末尾へ▲ 先頭へ


トップこのサイトについて3分で読む菅原道真みちざねっと・きっずFAQ読者アンケート
苦しい時の神頼み普通の人のための読書案内漢詩和歌快説講座作品一覧「研究文献目録」補遺

(C)1996-2024 Makiko TANIGUCHI. All rights reserved.
http://michiza.net/jcp/jcpkb482.shtml