山陰亭

原文|解説|口語訳

『古今和歌集』巻第九・羇旅歌・420

朱雀院《すざくゐん》の奈良におはしましたりける時に、手向山《たむけやま》にてよみける 菅原朝臣

このたびは幣《ぬさ》もとりあへずたむけ山 紅葉《もみぢ 》の錦《にしき》神のまにまに

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解説

 昌泰《しょうたい》元(898)年10月、宇多《うだ》上皇の吉野宮滝《みやたき》御幸に同行した際の作と言われます。
 百人一首に採られていることもあって、「このたび」が「この度」と「この旅」の掛詞《かけことば》なのは周知のことですが、どうも「手向山《たむけやま》」は固有名詞ではないようです。「旅の安全を祈って幣を手向ける山」(新日本古典文学大系『古今集』脚注)とか。紅葉の美しさを幣を引き合いに出して述べたのが本意です。

 対する素性《 そせい》法師の歌。
  たむけにはつづりの袖もきるべきに もみぢに飽《あ》ける神や返さむ
 神様は紅葉に御満足ですから、粗末な僧衣を切って幣にしても返されますね、と。

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口語訳

宇多上皇が奈良にいらした時に、幣を手向ける山で詠んだ歌 菅原朝臣

今度の旅は慌ただしく、手向山に手向ける幣も用意できておりません
 美しい紅葉を手向けますから、どうぞ神の御心のままにお受け取りください

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