山陰亭

原文|解説|口語訳

『菅家文草』02:150

七月七日、憶野州安別駕  七月七日、野州《やしう 》安別駕《あんべつが》を憶《おも》ふ

非無遠信屡相聞  遠信無きに非《あら》ざれば 屡《しばしば》 相聞《あひきこ》えども
此夕殊思欲見君  此《こ》の夕《ゆふべ》 殊《こと》に君を見んと思欲《おも》ふ
珍重牽牛期暁漢  珍重《ちんちよう》す 牽牛《けんぎう》 暁漢《げうかん》を期することを
悵然別駕隔秋雲  悵然《ちやうぜん》たり 別駕《べつが 》の秋雲を隔《へだ》つことを
定知霊匹同時拝  定《さだ》めて知る 霊匹《れいひつ》 同時に拝すことを
唯恨詩情両処分  唯《ただ》恨むらくは 詩情 両処《りやうしよ》に分かるることを
依乞平安帰洛日  依《よ》りて乞《こ》ふ 平安に帰洛《きらく 》する日を
満庭香粉幾紛紛  庭に満つる香粉《きやうふん》 幾《いく》ばくか紛々《ふんぷん》たらん

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口語訳

七月七日、上野介《こうずけのすけ》 安倍興行《あべのおきゆき》殿を想う

遠方からの便りがないわけではないので 頻繁に連絡を取っているが
今宵は とりわけ君に逢いたいと思う
ありがたいのは 牽牛《けんぎゅう》が 夜明けの天の川で(織姫に)逢うこと
残念なのは 介《すけ》殿が秋の雲に隔てられていること
きっと分かっている 牽牛と織姫の二星を (僕達は)時を同じくして拝んでいると
ただ恨めしいのは 詩心が(都と上野国《こうずけのくに》の)二所《ふたところ》に離れていること
そこで(天の川に)願う (君が)無事に帰京する日を
(その時)庭一面に どれほどの花がかぐわしく咲き乱れているだろうか

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