山陰亭

原文|解説|口語訳

『菅家文草』03:192

早秋夜詠  早秋の夜に詠ず

初涼計会客愁添  初涼《しよりやう》 計会《けいくわい》して客愁《かくしう》添ふ
不覚衣衿毎夜霑  覚えず 衣衿《いきん 》の夜毎《ごと》に霑《うるほ》ふことを
五十年前心未嬾  五十年前 心嬾《ものう》からず
二千石外口猶拑  二千石《にせんせき》外 口猶《な》ほ拑《つぐ》む
家書久絶吟詩咽  家書《かしよ 》久しく絶えて 詩を吟じて咽《むせ》び
世路多疑託夢占  世路《せいろ 》疑ひ多くして 夢に託して占ふ
莫道此間無得意  道《い》ふなかれ 此間《ここ》に得意なしと
清風朗月入蘆簾  清風朗月《せいふうらうげつ》 蘆簾《ろれん 》に入る

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口語訳

初秋の夜に詩を詠む

初秋の冷ややかさが (胸中を)見計らって旅の寂しさを増す
気付かないうちに 襟《えり》が毎晩濡れる
五十歳を前にして 心は煩わしい気分にはならない
国司の仕事以外のことには それでも口を閉ざす
自宅からの便りはすっかり絶え 詩を詠じて嗚咽し
人生の旅路には疑わしいことが多く 夢にかこつけて占う
言わないで欲しい この地に心にかなうことはないなどと
(詩の題材となる)清らかな風や明るい月が 蘆《あし》の簾《すだれ》から入ってくるのだから

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