山陰亭

原文|解説|口語訳

『菅家文草』05:425

夏日、餞渤海大使帰、  夏日、渤海《ぼつかい》大使の帰るを餞《はなむけ》し、
各分一字〈探得途〉   各《おのおの》一字を分かつ〈探りて途を得たり〉

初喜明王徳不孤  初め明王の徳は孤ならざることを喜びしも
奈何再別望前途  再び別れて前途《せんと 》を望むことを奈何《いかん 》せん
送迎毎度長青眼  送り迎ふる度毎《たびごと》に 長《とこし》へに青眼なれども
離会中間共白鬚  離れ会ふ中間に 共に白鬚なり
後紀難期同硯席  後紀《こうき 》 期し難《がた》し 硯席《けんせき》を同じくせんことを
故郷無復忘江湖  故郷 また江湖《かうこ 》を忘るること無《な》かれ
去留相贈皆名貨  去るも留るも 相《あひ》贈るは皆名貨《めいくわ》なれど
君是詞珠我涙珠  君は是《こ》れ詞の珠《たま》にして 我は涙の珠なり

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口語訳

夏の日、渤海《ぼっかい》大使(裴〓《はいてい》)の帰国に際して送別の宴を開き、
各自に韻字一字を割り当てた〈探韻して「途」を得た〉

当初は(あなた方の来朝によって)徳のある名君には必ず協調する者がいると喜びましたが
再度別れて将来(の再会)を期待しようにもままなりません
見送り迎える度ごとに いつも笑顔で迎えましたが
離別し再会する間に 共にあごひげが白くなりました
(次回使節団が入京する)十二年後に同席して詩を作ることは 期しがたいでしょう
(しかし)故郷に帰っても (この国の)川や湖をお忘れにならないで下さい
去る者も残る者も 優れた宝物を贈りますが
(私達が贈るのは)あなたが(詩という)珠玉の言葉で 私は涙の玉なのです

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