山陰亭

原文|解説|口語訳

『菅家後集』473

九日後朝、同賦「秋思」、応制  九日後朝、同じく「秋の思ひ」を賦《ふ》す、制《せい》に応ず

丞相度年幾楽思  丞相《じようしやう》 年を度《わた》れど 幾《いく》ばくか楽しび思はん
今宵触物自然悲  今宵 物に触れて 自然に悲しぶ
声寒絡緯風吹処  声の寒《さ》ゆる絡緯《らくゐ 》 風の吹く処《ところ》
葉落梧桐雨打時  葉の落つる梧桐《 ごとう》 雨の打つ時
君富春秋臣漸老  君は春秋に富《と》めども 臣は漸《やうや》く老ゆ
恩無涯岸報猶遅  恩は涯岸《がいがん》無《な》けれども 報《むく》ゆるに猶《なほ》遅し
不知此意何安慰  知らず 此《こ》の意《こころ》 何《いづ》れにか安慰《あんゐ 》せん
飲酒聴琴又詠詩  酒を飲み琴《きん》を聴き 又《また》詩を詠《よ》まん

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口語訳

重陽の翌日の宴にて、皆で「秋の思い」を題に詩を作る、詔《みことのり》に応じて

私は (右大臣就任以来、1年半あまりの)歳月を過ごしましたが (その間)どれだけ愉しい思いをしたでしょうか(そんな事はないのです)
(まして)今宵は 自然の物音を耳にして 訳もなく物悲しくなります
風が吹けば こおろぎが寂しげな声で鳴き
雨が降れば あおぎりが(音を立てながら)葉を散らせます
帝はお若いのに 私は次第に年老いてゆきます
(帝の)恩は限りありませんが お応えするには(この歳では)やはり遅いのです
この気持ちをどうやって慰めるのか (私には)分かりません
(せめて白居易のように)酒を飲み琴を聴き さらに詩を作ろうと思います

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