山陰亭

原文|解説|口語訳

『菅家後集』485

秋夜〈九月十五日〉  秋の夜〈九月十五日〉

黄萎顔色白霜頭  黄萎《くわうゐ》の顔色《がんしよく》 白霜《はくさう》の頭《かうべ》
況復千餘里外投  況復《いは》んや 千餘里外《せんよ りがい》に投ぜられしをや
昔被栄花簪組縛  昔 栄花《えいぐわ》 簪組《しんそ 》に縛《しば》られしも
今為貶謫草莱囚  今 貶謫《へんたく》 草莱《さうらい》の囚《とりこ》 為《な》り
月光似鏡無明罪  月光 鏡に似《に》たれども 罪を明らむること無《な》く
風気如刀不破愁  風気 刀の如《ごと》くなれども 愁《うれ》へを破らず
随見随聞皆惨慄  見るに随《したが》ひ聞くに随ひ 皆惨慄《さんりつ》たり
此秋独作我身秋  此《こ》の秋は独《ひと》り我が身の秋と作《な》る

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口語訳

秋の夜〈九月十五日(の作)〉

黄ばんだ容貌《ようぼう》 白くなった頭
まして 千里あまり外に投げ出されたこの身の上といったら
昔は 栄進して (高官として)簪《かんざし》と印綬《いんじゅ》(印を帯びるひも)に縛《しば》られていたのに
今や 遠方に左遷され 荒れ野の捕虜《ほりょ 》である
月の光は鏡に似てはいるが 罪を明らかにはせず
風は 刃物のように鋭《するど》くても 憂いを突き破ることはない
(月の光を)見るにつけ(風の音を)聞くにつけ 皆痛切に感じる
今年の秋は私一人だけの秋なのだ

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