山陰亭

原文|解説|口語訳

『菅家後集』496

奉哭吏部王〈故一品親王〉  吏部王《りほうおう》を哭《こく》し奉《たてまつ》る〈故一品《いつぽん》親王なり〉

配処蒼天最極西  配処《はいしよ》は蒼天《さうてん》 最も西を極《きは》むれど
恩情未見阻雲泥  恩情《おんじやう》は雲泥《うんでい》に阻《はば》まれず
去年真跡多霑潤  去年の真跡《しんせき》 多く霑潤《てんじゆん》なれど
今日飛聞甚懆悽  今日《こんじつ》の飛聞《 ひぶん》 甚《はなは》だ懆悽《さうせい》なり
元老応無朝位立  元老《げんらう》無かるべし 朝位《てうゐ 》に立つこと
林亭只有夜禽棲  林亭《りんてい》只《ただ》有らん 夜禽《 やきん》の棲《す》むこと
世間自此琴声断  世間 此《こ》れより琴声《きんせい》断《た》え
不独人啼鬼亦啼  独り人の啼《な》くのみにあらず 鬼《き》も亦《また》啼かん

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口語訳

式部卿《しきぶきょう》の逝去《せいきょ》を悼《いた》み申し上げる〈亡き一品《いっぽん》(本康《もとやす》)親王のことである〉

(私の)左遷された地は西の空の果てだが
(親王の)厚情は遠く離れても変わらなかった
昨年の直筆(の手紙)は とても恩情のこもったものであったのに
今日の急な知らせは ひどく痛ましい
長老が 朝廷に地位を占めることはないだろう
林亭は(主を失って) ただ夜行性の鳥が生息するのだろう
今後 世の中に琴の音は絶え
人間が慟哭《どうこく》するだけではなく 鬼神も(琴の名手を失って)慟哭するであろう

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