山陰亭

原文|解説|口語訳

『菅家後集』509

燈滅、二絶(2)  燈《ともしび》 滅《き》ゆ、二絶(2)

秋天未雪地無蛍  秋 天に雪あらず 地に蛍《ほたる》無《な》し
燈滅抛書涙暗零  燈滅え 書を抛《なげう》たば 涙暗《あん》に零《お》つ
遷客悲愁陰夜倍  遷客《せんかく》の悲愁《 ひしう》は陰夜《いんや 》に倍《ま》す
冥冥理欲訴冥冥  冥々《めいめい》の理は冥々に訴へんと欲《ほつ》す

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解説

 508「燈滅ゆ、二絶(1) 」に続く詩ですが、厳密には連作ではありません。第1首は「月の明らかなる中」と結ぶ通り、月が出ていますが、第2首は「陰夜」つまり雨天か新月前後(おそらく後者)の作と思われるからです。

 「螢の光、窓の雪」とは有名な歌の一節ですが、ともに中国の故事に由来します。書物を読みたくても貧しくて油を買えず、車胤《しゃいん》は螢を集めて袋に入れ、孫康《そんこう》は窓辺に積もった雪で月の光を反射させ、灯火の代わりとしました。それを踏まえて「秋だから雪が降るには早いし、螢も舞う時期を過ぎている」というのは冗談めいた口調ですが、実際に読書すらできない状況に突き落とされてみると、空しさだけが募ります。
 暗闇の中で悶々としているうち、何もできないこの時にこそ天に真実を訴える機会があるのではないかと思い直すに至り、道真はせめてもの慰めを得たのでした。

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口語訳

灯火《ともしび》が消えた、絶句二首(2)

秋は 天に雪もなく 地に蛍もいない(窓の雪も蛍の光もないので読書には灯火だけが頼りである)
(しかし)灯火が消え 書籍を投げ出すと 涙が人知れずこぼれる
左遷された旅人の哀しみは漆黒の夜に増す
深遠な道理は(この)暗闇(の中)に訴えたい

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