山陰亭

原文|解説|口語訳

『拾遺和歌集』巻第六・別・351

流され侍《はべり》て後、言ひをこせて侍ける 贈太政大臣

君が住む宿のこずゑのゆくゆくと 隠るるまでにかへりみしはや

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解説

 延喜元(901)年の作。
 この「君」が宇多法皇だという見方がありますが、『拾遺和歌集』のもととなった『拾遺抄《しゅういしょう》』の詞書(巻第六・別・227)には、「流され侍《はべ》て後、妻のもとに言ひをこせて侍ける」と相手を明記しています。具体的に誰を指すかは不明ですが、ひとまず、正室・島田宣来子《しまだののぶきこ》(幼少時から師事していた島田忠臣《ただおみ》の娘)という通説にしたがっておきます。

 漢詩と和歌の性格の違いなんでしょうが、道真の漢詩には恋愛関係の話がまず出てきません。妻を指すにも「息子の母親」と迂回した表現をとることがあるほどで、漢詩は異性への愛を語るものではなかったのです。
 そう考えると、この歌は道真が妻に贈ったという珍しいものなのですが、「見えなくなるまであなたの家を眺めていました」(これは「あなたのことをずっと考えていました」という意味でもあります)と名残惜しさを告白されると、女性は感極まるものです。

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口語訳

流されて後、言い寄こした歌 贈太政大臣

あなたが住む家の木の梢が遠ざかるにつれ 隠れて見えなくなるまで振り返って見たことよ

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